招待講演
橋本 周司 先生
- 題目:「計測からAI・ロボットまで」
- 概要:
- 測定の原理と方法論の確立さらにその実装に始まった計測工学は、測定結果を加工する信号処理から情報処理へと質的な変化を伴いながら発展した科学技術のひとつの源流である。この流れの中で数量、記号、パターンを人間と同じように操ることを目指す人工知能の研究開発が、コンピュータとネットワークの飛躍的進歩を背景に加速している。一方で人間は、計測によって量を数値化できると必ずこの量を操作したくなる。「より大きくしたい」、「より小さくしたい」、「何があっても一定に保ちたい」というわけで、制御工学が並進して発展した。「計算機が身体を持った」、あるいは「機械が頭脳を持った」と言われるロボットは、計測工学に端を発する人工知能と機械制御系の融合の結果と言える。
ここでは、筆者のこれまでの体験を軸に、計測からAI・ロボットまでの歩みを振り返り、さらにその先を展望する。
- 所属:早稲田大学副総長 教授
- 日時:2018年9月3日(月)
- 会場:視聴覚ホール
高良 富夫 先生
- 題目:「琉球語の知能情報処理」
- 概要:
- 琉球語(方言)は、沖縄が地理的にそうであるように、言語学的に日本の辺境にある。また、日本語は本土方言と琉球方言から成ると言われるように、琉球語は、本土方言と並ぶ大方言である。このようことから琉球語は日本語を研究する上で大変重要な位置を占めている。
我々は35年ほど前から、コンピュータを駆使して琉球語の音声・音韻の「合成による分析」を行ってきた。その中から、まず琉球語の音声合成システムを紹介する。これは、琉球語の標準語とされる首里方言のテキスト音声合成システムである。これは原著論文として、電気学会論文誌Cに掲載された。次に日本語から琉球語への翻訳システムを紹介する。これは、第2次人工知能ブームのころエキスパートシステムとして構成したものである。これには琉球語と日本語との間に存在する法則性が組み込まれており、これにより新しい琉球語の単語を創生することもできる。
最後に、最近の我々の知能処理研究として、「合成による分析」の基になった運動説に基づく音声単語獲得モデルについて紹介する。これは、遺伝的アルゴリズムを用いて音声の物理的な側面と言語的な側面のギャップを埋め、音声自動認識への応用が期待できる有効な方法である。
- 所属:琉球大学 前工学部長 名誉教授
- 日時:2018年9月4日(火)
- 会場:視聴覚ホール