話題提供セッション1
ISOBUS規格の概要ととかち財団の取り組み
公益財団法人 とかち財団 ものづくり支援部
松原 慎吾 氏
概要
本講演では,「ISOBUS規格の概要ととかち財団の取り組み」について解説します.ISOBUSは,トラクタと作業機間の国際通信規格ISO 11783に基づき,業界団体AEFが実装した統一仕様です.これにより,メーカーや作業機の種類を問わず相互接続性が保証され,ユニバーサルターミナル(UT)を用いて各社の作業機を制御可能になります.さらに,公益財団法人とかち財団が開発したISOBUS対応ポテトプランターについても紹介します.このプランターは播種ユニットと施肥ユニットの電動化により,精密な農作業を実現します.トラクタからの車速情報をもとにした自動制御やタスクコントローラによる可変播種・可変施肥機能を備え,精密農業と呼ばれる効率的な農業を支援します.講演では,映像を交え,ISOBUSの利点と最新技術の応用例を具体的に説明します.最後に,プランターの実機デモを行います.
話題提供セッション2
続・なぜロボットはお茶を持ってきてくれないのか?
~ 観て・考えて・動くことの難しさとロボット研究の魅力 ~
中京大学 工学部 機械システム工学科 教授
橋本 学 氏
概要
「お茶を持ってきて~」‥‥このたった一言だけで,人間ならごく簡単にお茶を持ってきてくれるが,残念ながらロボットにはまだそのような能力はない.ロボットが自ら行動計画を生み出し,手順に分解し,具体的な動作を生成し,実際に動くまでの過程で,いったい何が難しいのかを整理するとともに,これを解決するために,当研究室で取り組んでいる一連の研究事例を紹介する.
特に,近年注目されている大規模言語モデルは,これまで難しいとされてきた上位レイヤーの行動計画の生成に大きな希望を与えているが,実際にはさまざまな課題も浮かび上がってきている.我々も,言語モデルによる動作生成をベースに,ビジョン技術を駆使した「実際に動くロボット」の実現に奮闘しているが,むしろ課題は増える一方である.本講演では,具体的な研究トピックスを動画を交えて紹介し,この魅力的な研究分野に関する多角的な話題を提供させていただきたい.
招待講演1
Special lecture 1招待講演1
リモートセンシング技術を活用した大規模畑作地帯の土壌管理
株式会社ズコーシャ
丹羽 勝久 氏
概要
北海道十勝地域は大規模畑作経営が行われており,分布土壌は主に火山灰を母材とする黒ボク土と,河成堆積を母材とする低地土である.そのうち黒ボク土では肥沃度に関連する土壌腐植含量が不均一に集積する特徴を持つ.弊社ではその特徴に着眼し,ドローンで撮影した裸地画像から一筆圃場内の窒素肥沃度のばらつきを評価し,その情報に基づいて窒素の可変施肥を行うシステムを構築した.本発表ではシステムの概要と効果について報告する.一方,近年,衛星画像のオープンデータ化が進み,例えば欧州宇宙機関のSentinel-2の衛星画像データ等は無償で提供が行われている.すなわち,安価に複数の衛星画像を用いた解析が可能になりつつあり,このことから,本報告では複数の衛星画像の解析により農業情報を把握した事例(黒ボク土の可変施肥の適地判定,低地土の作物生育阻害要因の推定)についても報告する.